その敏感さは、生まれもったものなのか… 環境によるものなのか ✨

 

敏感すぎる自分にどのように対処すればよいのか考え、悩み、なんとか克服しようと模索し続ける日々・・・それでもなお、社会生活をこなしていくことの大変さを感じるときには“過敏性”に対する理解がとても重要になってきます。

 

心の専門家によって多くの研究がなされてきた“過敏性”は、生まれもった気質だけで決まるといった一側面だけのことではなく、一人一人がさまざまな思いを抱きながら生き抜いてきた歴史とともにあるとも言われます。

 そんな過敏(敏感で繊細)な自分と向き合い、その背景を捉えなおしていくうちに、その人の抱えている根本的なテーマが見えてくることがあります。

 

 

さまざまな HSP の方々との出会いを通して

過敏さというものについて、より深く学ぶにつれて、それは突き出した氷山の一角にすぎず、本体はもっと大きなもので、その人の存在の根底に深くかかわっているということを確信する。

という岡田氏※1の言葉を実感しています。

 

HSPの共感性の強さや刺激の受けやすさ、過剰な同調性は、生まれつきの気質もありますが

虐待的環境、家族内の対立、病気がちな兄弟姉妹の存在のため

家族の中で一番敏感な子が、家族の歪みを受けやすく、独特の敏感さから親の内面の苦しさや矛盾に無意識に気づき、反応してしまいます。

「家族に迷惑をかけまいと自らを抑え、自分の本音を出さないようにした」とも考えられ

「いい子」 「身代わり」 「道化役」 「世話役」 時には、「病気」などの役割を請け負わされてしまう傾向があります。

 

思春期の自我の形成とともに「もう一人の自分」が現れ、いい子の自分の背後に居場所を作って住みつきます。それは家族の犠牲者としての自分であり、強い攻撃性を内在しています』と長沼氏※2は言います。

 

また、「親から愛情を十分に受けていない」と感じて育ったHSPが数多くいるとも言われます。親の言いなりになったり、親に気を遣って自分の本音を出せなかったために、そのように感じているのですが、親にとっては、「気がきいて、頼りになる問題のない子だった」という印象になります。

一説によると、現代の日本で本来あるべき愛着関係を形成できている家族は3割程度であるとされ、家族内に問題を抱えていることは珍しいことではないとも言えます。

《愛着(アタッチメント)とは、養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのこと》

 

安心できる愛着を感じて育った敏感な子は、刺激過多の中にあっても大丈夫なのですが、十分な愛着が得られずに育った敏感な子は、あらゆる刺激が耐え難いものとなり、現実から意識を一時的に失われた状態にする(解離)ことがあります。外部からの刺激を防ぐために精一杯となり、自我の形成ができにくくなるとも言われています。

また、常に子どもを心配して手を出してしまうような過保護な育て方も、子どもにとっては刺激過多となり、外界への探求心を削いでしまい、自由を奪うことになります。

 

“敏感すぎる”ことによって受ける影響は、敏感さの少ない人の10倍、100倍など人一倍大きなものであり、敏感な状態でも、多様な要素を含んでいて、原因もさまざまです。

 

言葉での虐待や日常的に叩かれる身体的虐待の中で育つなど、安心感がいつも脅かされてきた場合

過保護な環境で育ち、守られ過ぎて、ストレスへの耐性がついていないという場合

不安が強い遺伝的体質による場合

(不安の制御に深くかかわる神経系の働きが弱いことで過敏になり、不安を感じやすくなる。また、別の神経系が働きすぎることでも、過敏になることがあります。)

  

また、過敏性はさまざまな疾患や障害に伴って表れますし、睡眠不足や過労、二日酔いによっても強まることが知られています。

 

 

《 自分の特性を生かす道を歩みたい 》

 ひとが成長する過程においては、親など養育者の影響はとても大きく、その人を縛っているような価値観などの思考、また感情や行動のパターンも組み込まれているため、本来の自分の思考や感情を無意識に抑圧することで、どうにか家族内の自分を保ってきたという面があり、それは生き延びるためには必要なことでした。そのため、「いつものこと」と当たり前のように考え、行動しており、自覚されにくいものでもあります。

成人し、育った環境以外の社会で、さまざまな人と出会い、新たな体験を積み重ねる中で、年齢とともに養育環境の影響は薄らいでいくことがわかっています。少しずつ自分を縛っていたものから自由になり、自分ならではの可能性を開拓することもできるようになるとも言われています。

しかし、社会に出て働く、親元から離れて暮らすなど新たな人生を始めたつもりでも、同じ失敗を繰り返していたり、同じような人とトラブルになるといったことが起こったり、今までのやり方が通用しないような困った事態に遭遇した場合などは、育ってきた環境による何らかの影響が及んでいる可能性があります。

敏感な感受性ゆえに、知らず知らずのうちに心に多くのものを抱え、“生きづらさ”となっている場合もあります。敏感な自分と他者とを比較し、自己を否定することも多かったHSPだからこそ、個々の特性に合った環境を整え、自分を生かす道を歩んでいただきたいと思います。   

 

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ご自身の“過敏性”は

生まれもったものなのでしょうか、育ってきた環境によるものなのでしょうか

 

u  生まれもった特性としての過敏性

u  生きづらさや幸福度などの心理的な面 と 対人関係など社会的な側面の過敏性

 

過敏性の特徴をチェック  pdf 過敏性チェックリスト.pdf (0.26MB)

過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道 岡田尊司 より

 

 

【過敏性の特性や傾向について】※1

 神経学的過敏性

神経学的過敏性が強い人では、全体としてみると人の顔色に敏感で、些細な兆候から自分が見捨てられたように思いやすい傾向がみられます。自分にとって大切な存在のことを無条件に信じることができず、常に相手の反応を気にして、自分はいつか拒否されるのではないかという不安を感じやすいといわれます。

こうした愛着不安と神経学的過敏性との関連性はかなり高いという結果が出ています。

親に見捨てられるようなつらい体験により神経学的な過敏性が強まったのか、もともと過敏だったところに見捨てられる体験をして、さらに傷つきやすくなったのかというのは、これまで行われてきた多くの研究では、両方のメカニズムが関わっていることを示唆しています。

 

 

過敏性と心の傷

神経学的過敏性が高い人では、心が傷を受けやすいだけでなく、それを長く引きずりやすい傾向がみられます。過敏性があまり強くない人たちでは、心の傷のスコアが高い人は、低い人の半分程度でしたが、過敏性が強い人たちでは、その割合は逆転し、心の傷のスコアの高い人のほうが、低い人の8倍にも達しています。心の傷を抱える相対的なリスクは、過敏な人では、過敏でない人の約2.8倍になる計算です。

また、過敏性と心の傷の要因が重なると、妄想傾向が著しく強まり、過敏性も心の傷もあまりない場合と比べて2.74倍になります。逆に、社会適応度は低下し、特に両方が重なったとき、社会にうまく適応できていないと感じる傾向が顕著に強まります。

 

 

過敏性と身体化

神経が過敏な人では、気分が憂うつになりやすいだけでなく、体調もすぐれないといった傾向が見られます。平日は仕事に行き、土日になると外出が億劫になったり、横になって過ごすこともしばしばです。ちょっと出かけて友人や知り合いと会っただけで人の何倍も気疲れしてしまい、二三日寝込んでしまうなど、とても疲れやすい傾向があります。

また、疲れるとよけい過敏になって、頭がさえ、次々といろんなことを考えすぎて睡眠などに影響が出やすいというのも、抑制性の神経機構が弱いためです。外出や人と会う予定、気になる予定があると前夜は眠れないということも珍しくありません。

さらに、体がいつも硬く、緊張しやすいため、肩こりや頭痛で悩んでいる人がとても多く、痛み止めが手放せないという人も少なくありません。

過敏で身体化も伴った人では、過敏性も身体化も見られない人に比べて、幸福度が大幅に下がっているという結果となっています。両方の悪条件が重なると、さらに辛さが増して、物事を被害的に受け止めてしまうことで、妄想傾向が著しく強まると考えられます。

身体化しやすい人の割合が、過敏な人では半分近くに達し、過敏性のない人の13%に比べると、身体化のリスクが約4倍に増えるという結果となります。

 

 

過敏性と生きづらさ

岡田氏によって調査された項目の中で、過敏性ともっとも強い関係性を示したのは

“生きづらさ”(生きるのが苦痛で嫌だと感じている傾向)でした。

過敏な人は、生きることに、喜びよりも苦痛を感じてしまう傾向があり、生きるのが嫌だと感じるのには、気分だけでなく、体が不調になりやすいことも関係しているようです。

過敏な人をより一層苦しめるのは、心理社会的な傷つきやすさとされ、人の顔色を過度にうかがったり、恐れや不安を抱いたり、猜疑心が強まってしまったりします。

生きづらさをあまり感じていない人では、ほとんどの人が幸福だと答えています。一方、生きづらさを感じつつも幸福だと答えた人は44%で、肯定的認知のスコアが幸福でないと答えた人の1.6倍という結果でした。逆に、生きづらさがあまりないにもかかわらず、幸福感が乏しいと答えた人では、肯定的な認知のスコアが、幸福だと答えた人の半分以下だったという結果でした。

肯定的な認知の傾向がある人では、実情がどうであれ、幸福だと前向きに答える傾向があるのかもしれないと分析されています。

 

 

安全基地

安心感の拠り所となる存在は、「安全基地」とも呼ばれます。

過敏な傾向を抱えている人は、そうでない人よりも、もっと支えや安心感を必要としているはずですが、現実は、もっとも不足している人ほど、与えられないということが起きがちです。

 親との愛着が不安定であったり、虐待やイジメを受けたりすることで、本来の安全基地が安全基地として機能してこなかった人では、心理社会的過敏性だけでなく、神経学的過敏性さえも亢進しやすいといえるようです。

また、過敏であるために、相手を信じたり、素直に受け入れることができず、親密な関係を築いたり、信頼関係を維持したりすることが難しく、安全基地を保持しにくいという面があります。過敏な人では、「安全基地」がうまく機能しないリスクが、あまり過敏でない人に比べて、約2.4倍に上昇しています。

 

感覚過敏や神経過敏を引き起こす状態には、愛着を得られなかった場合と別の障がいなどによるものがあります。過敏性プロファイルは、両者を鑑別する上で助けにはなりますが、成育歴や養育環境について、できるだけ多くの正確な情報が鑑別には重要とされています。

大人になって幼少期のことを思い出すのが難しい場合、親との関係が安定したものかどうか、困ったときに親に甘えられるかどうかがポイントになりそうです。

親との関係がどこかぎこちなかったり、親に素直に甘えられない場合や、逆に過度に気を遣い過ぎる場合にも、愛着を得られなかったということが疑われます。

 

 「安全基地」は、遺伝的要因のように動かし難い要素ではなく、本人や周囲の人の理解と努力によって、その機能を大幅に変化させることができると岡田氏は言います。

 安全基地機能を改善することにより過敏性が和らぎ、それによって、さらに安全基地機能が高まるという好循環を生むことが、絶望的に思われていたケースの回復において一つのカギを握ると言えます。

また、岡田氏の言うように、心理に携わる専門職として何かお役に立てるとすると、その最大の役目は、“臨時の安全基地”を提供することかもしれません。

 

 

過敏な人にもっとも特徴的な“二分法的認知”

二分法的認知とは、「全か無か、白か黒か、全部良いか全部悪いか、のどちらか」といった認知の傾向で、ネガティブな認知以上に強い結びつきを示しています。

 この二分法的認知は、過敏な人では極端な結論に走りやすく、それまで好意的に受け止めていたことも、何か思いに反することが起きると全否定してしまいやすく、関係が終わってしまうことも珍しくない。5人に4人はこの認知によって幸福度を下げてしまっていると推測できるとのことです。

さらに注目すべきは、神経学的過敏性、心理社会的過敏性とも、現在、安全基地なる心の拠り所がある人では軽くなる傾向が見られ、その傾向がいっそう強かったのは、心理社会的過敏性においてでした。過去の境遇よりも、「認知が二分法的」のほうが強い結びつきを示し、更にそれを上回っていたのが、「安全基地がうまく機能しているかどうか」という結果だったということです。

過敏性に、過去の境遇そのものよりも、物事の受け止め方である認知(特に二分法的認知)や、現在の安全基地が機能しているかの方が強く関係しているとしたら

肯定的認知を意識し、二分法的認知をバランスの良いものに変える。

物事を自分の視点から離れて見えるように訓練する。

安全基地の機能を高めたり、うまく利用したり、さらには自分の中に安全基地を確保する。

など・・・ 

われわれに変えられる余地は、思っている以上に大きいと言えるかもしれません。

 

 

過敏性と抑制系の仕組みの弱さ

 過敏な人は、ある特定の刺激に対して過敏性のスイッチが入っている状態だともいえます。もともとスイッチが入りやすい特性を持っていたとすると、また別の刺激に対しても、過敏になりやすく、1つのものにアレルギーを起こすようになると、年々アレルギーを起こすものが増えていくように、過敏性も、特定のものから、さまざまな物へと広がっていきやすくなります。

そうならないように、特定の人が苦手だからと言って、人間全体がダメだ「自分は誰とも上手くやっていけない」と考えるのではなく、「あの人とは合わないのだ」と考えたほうがいいということになります。

 

 過剰な反応を引き起こしやすいのも、興奮を抑制する仕組みが弱いためとも考えられ、抑制系が弱いと、一部分だけが反応すればよいところ、全部が反応してしまい、過剰反応が起きやすくなります。 

 こうした抑制系の弱さは、馴れがなかなか生じないため、新しい刺激や環境の変化は苦手で、社会適応にも不利に働いてしまいます。

 新しい場所やなじみにくいというだけでなく、新しい料理を食べたりすることにも消極的で、食わず嫌いになりやすい傾向がみられます。また、突発的に予想外のことが起きるのも苦手で、強いストレスを感じたり、パニックになりやすかったりします。変化よりも現状維持を好む傾向は、チャレンジを避ける傾向にもつながります。不安や恐れを感じやすいため、どうしてもリスクをとる余裕がなく、リスク回避と安全策を優先することになりやすいのです。

 人付き合いも重荷に感じられ、楽しい集まりであっても、気疲れすることや嫌なことがあるかもしれないと、悪い可能性ばかりを考えてしまいます。それならやめておこうと、結局キャンセルしてしまい。予定や約束を入れることも負担に感じられるので、友達とも縁遠くなってしまいがちです。

 

 こうした消極的な傾向は、若い頃にもっとも強まりやすく、十代後半から二十代にかけて、性ホルモンなどの関係もあり、過敏さがもっとも強まる傾向があるからだと考えられています。過敏な人では、若い頃の方が、元気がなかったというケースが少なくありません。

 

 自分の特性をどのように使って社会と繋がっていくのか、今一度考えてみたいと思うのです。

 

 

※1 過敏で傷つきやすい人たち -HSPの真実と克服への道- 岡田尊司

※2 敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本 長沼睦雄