【 ストレス と ストレッサー ◆ ライフイベント法 】
ストレス社会と呼ばれる現代では、老若男女問わず多くの人がストレスにさらされています。生活の中で多少のストレスは避けられないものの、強すぎるストレスは身体面・精神面に様々な影響を及ぼします。ストレスと上手く付き合うには、ストレスとストレッサーについて理解することがポイントです。
■ストレスとは
ストレスはもともと物理学の分野で使用されていた言葉でした。カナダの生理学者ハンス・セリエがストレス学説を提唱したことで、現在のように広く知られるようになりました。生体に何らかの刺激が加わり、その刺激によって生体が歪んだ状態をストレスと言います。例えばゴムボールを指で押すとへこみができます。このへこんだ状態がストレスなのです。
■ストレッサーとは
ストレス = 何らかの刺激 と思いがちですが、実は歪みの原因となる何らかの刺激はストレッサーを指しています。先述したゴムボールで例えるなら、ゴムボールを押す指がストレッサーになります。ストレッサーは身体面・心理面・行動面でストレス反応を引き起こします。
ストレス反応の種類
身体面・・・肩こり・頭痛・目の疲れ・不眠・動悸など
心理面・・・イライラ・不安・焦燥感・抑うつ・無気力など
行動面・・・飲酒量や喫煙量、ヒヤリハット、仕事上のミス・事故などの増加など
■ストレッサーの種類
- 〈物理的ストレッサー〉
気温や天候、音(騒音・隣人の出す物音)、匂い、光、放射線、混雑(人混み)など - 〈化学的ストレッサー〉
タバコやアルコール、大気汚染、薬物、化学物質や有機溶剤、一酸化炭素、酸素の欠乏・過剰(室内の空気環境)など - 〈生物的ストレッサー〉
細菌やウイルス、カビ、花粉など - 〈心理的ストレッサー〉
怒りや悲しみ、不安、焦り、緊張、抑うつ、失望や挫折、欲求不満、などの感情。恐怖体験 - 〈社会的ストレッサー〉
学校や職場での人間関係、進学、昇進、定年、経済問題、隣人とのトラブル、結婚、生活環境の変化など - 〈身体的ストレッサー〉
過労、睡眠不足、栄養不足、病気、けが、虫歯、成長、加齢、体力低下、出産など
一般的に言われる ストレス のほとんどが、心理・社会的ストレッサーになります。
ストレッサーは種類によって対処法が異なり、さらに同じストレッサーでも受け手によって良いストレス・悪いストレスになるかが違ってきます。毎日の生活を工夫し、ストレスに振り回されないことが重要です。
※ストレス度の測定法に関して、ストレッサーを測定する有力な方法として、ライフイベント法が使われています。以下、ホームズとレイのストレス度表になります。
■ホームズとレイのストレス度表
(社会的再適応評価尺度Social Readjustment Rating Scale:S.R.R.S.)
アメリカのホームズらは、5000人の患者さんを対象として生活史を中心として過去10年間にわたる生活上の出来事を調査し、それに基づいて43項目のストレッサーからなる調査票を作成しました。個人が感じるストレスの程度を、「結婚」を 50 とし、これを基準に 0~100点の間でそれぞれのストレッサーの強度を自己評点します。対象者における各項目ごとの平均点を求め、「ライフイベント得点」として、1967年に論文として発表しました。
ライフイベント得点はこちら → ホームズとレイのストレス度表.pdf (0.12MB)
1年間の合計点数が300点を突破した人のうち、79%は翌年に何らかの身体疾患を訴えたそうです。200~299点では、それが51%に減り、150~199点では39%でした。ストレスの蓄積が大きいほど身体疾患を訴えやすいということは明確になっています。しかしホームズらが示したのはあくまでも平均値であり、実際は人によって、こうむるストレスの大きさが違ってきます。
■勤労者のストレス点数のランキング (夏目誠氏らによる)
ホームズらのライフイベント法は、その後多くの追跡研究がなされています。日本では、夏目誠氏ら(大阪府立こころの健康総合センター)により、勤労者のストレス度を知り、ストレスの気づきへの援助に活用するために、ホームズらのS.R.R.S.に準拠しながらライフイベントの内容を日本的に改変し、あらたに職場生活に関する項目を追加した勤労者ストレス調査表(65項目からなる)が作成されました。
1630名(うち女性 308名)の勤労者を対象に、個人が感じるストレスの程度を 結婚=50とし、0-100 の間で自己評価により点数化したものです。(産業医学、30巻、1988年より引用)
勤労者のストレス点数はこちら → 夏目誠氏ら 勤労者のストレス点数.pdf (0.19MB)
■主婦・大学生・短大生のストレス点数のランキング
・424名の主婦を対象に点数化したものです。
主婦のストレス点数はこちら → 夏目誠氏ら 主婦のストレス点数.pdf (0.18MB)
・大学生1900名(うち女性335名)、さらに、女子短大生542名を対象に、大学入学を50として点数化したものです。
大学生・短大生のストレス点数はこちら → 夏目誠氏ら 大学生のストレス点数.pdf (0.21MB)