【 ふたごの心理 】現れていない因子を伸ばそう!

 「ふたごです」と言うと「似ていますか?」と聞かれることがよくあります。「似ています」と答えると「同じタイミングでお腹が痛くなるとかあるんですか?」と話が展開していくことがありますが、「似ていないんです」と答えると、話の腰を折ってしまったような空気になって、申し訳ない気持ちになったりします。端的に「似ている」または「似ていない」と答えるのは違うなと思っています。

 

 

ふたごならでは・・・ 

 ふたご同士の能力的な優劣差をつけないためにも「平等」に扱うということは、とても大切なことだとされていますが、なかなか難しいことだとも思います。どんな兄弟姉妹の間でも「平等にしてほしい」という思いは抱くものですが、一般的には、ふたご同士の間でお互いに相手のみを意識するのは中学三年生くらいまでといわれ、その頃までは何かにつけて平等にしてほしいと思うことが多いようです。また、一般的に、ふたごとそれ以外の“きょうだい”がいた場合には、ふたごでない子どもに特に心を配る必要があるといわれています。

 

 これまで、私自身が出会った“ふたご”というと・・・

 

 いつも一緒に登下校していた姉妹、その後の人生のことを思って別々の大学に進学を決めていました。逆に、互いに異なる友達がいて別々の部活に入り、それぞれの個性をもっていて互いを意識していないような兄弟、積極的な姉に対して消極的な妹がいつも姉の後ろにいるような姉妹、スポーツや試験など、何かと競争しあっている兄弟もいました。

 

 

遺伝と環境・・・二人の性格と個性 

 東京大学教育学部附属中等教育学校(中学一年生から高校三年生)は1947年から毎年20組ほどの“ふたご”が入学し、ふたごを通してわかる「遺伝と環境」のかかわりについて、一般教育により広く役立てるために調査・研究が行われてきました。

 

 新年度の時期、ふたごのクラスメイトたちは一か月も一緒に過ごすと、決して二人を取り違えたりすることはなく、外見的な類似を超えて、それぞれに「固有の存在」つまり「個」として受けとめていきます。とくに外見的に特徴の違いがゼロに近いともいえる一卵性双生児にかかわるからこそ、教師として、生徒を一人の個人として認知することの意味を教わることができたと語られています。

  

 遺伝子が同じ一卵性のふたごでは、すでに遺伝子レベルでほとんどのことが決まっていながらも、ほんの少しのさまざまな学習や体験といった環境の変化が、個人の物事の考え方や行動のあり方に影響を与え、それが一人一人の真の独特な個性をつくり出しているといえます。

 環境が変わると性格や個性に変化の見られることもあり、クラス替えで、それまで無口だったふたごの一方が非常ににぎやかで活発なクラスの一員になると、おしゃべり好きで明るい性格に変わるということがあります。ふたごの場合には、環境の変化ということだけでなく、ふたご同士の関係が影響してそれぞれの性格や個性に変化が現れるということが起こります。

 

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表面的に現れていない因子を伸ばすのも自分 

 とくに一卵性のふたごは遺伝的に同じ要素をもち、性格や個性を形成していくうえで基礎となる因子も同じようにもっていると考えられます。そんな二人が異なる個性や性格となるのは、環境から学ぶことがらや自分自身の働きかけの違いによって、同じ遺伝子をもちながらも現れてくる因子の違いによって、性格や個性に違いが生じてくるのだと考えられています。

  

 

   このような考え方からすると・・・

 

 一人の人間が伸ばせる性格や個性の範囲は、私たちが思う以上に幅が広いといえそうです。表面的には現れていない因子をひそかにもっているとすれば、今現れている性格だけが自分の性格であると決めつけることができないといえるからです。また、性格や個性は年齢が進むにつれて確立されていくように思いますが、それは決して固定した変わらないものではなく、環境の変化によって変わることもあれば、自分の意志で、作ったり作り変えたりしていくことができるものではないかとさえいえそうです。

 

 

 

 同じ遺伝子をもつ“ふたご”としての人生の中で、歩む方向性に迷ったとき、人生の選択のとき、ふっとした瞬間、「自分らしさ」に疑問をもったときには・・・

 

カウンセリングや心理療法などで、現れていない因子を見つめていくことが役に立つかもしれません。ご本人はもちろん、ご両親ごきょうだいなど身近な方々の思いもお聴かせください、お待ちしています

 

 

 

このコンテンツは、「ふたごと教育 双生児研究から見える個性」東京大学教育学部附属中等教育学校編 を参考に作成させていただいています。